全国の福祉施設を取材していると、本当に素晴らしい活動をしている人たち(とくに女性が代表のところが多い!)と出会います。先日お邪魔した、長野県千曲市にある「ごちゃまぜカフェ」もまた、新しく出会った素敵な施設の1つ。NPO法人Happy Spot Clubが運営するコミュニティカフェです。
お年寄り、障害のある当事者、ひきこもりの若者、子育て中のお母さ。障害や年齢に関係なく、地域のみんなが一緒に集える居場所作り……といったコンセプトは、いまや珍しくはありません。とくに全国の市社協では、こういった居場所作りを積極的におこなっていますし、その現場もいくつか拝見させていただきました。「ごちゃまぜカフェ」がすごいのは、社協や社会福祉法人が行政から何らかの事業を受託するのではなくて、独自の活動としてこれを行っている点にあるのです。
もともとこの団体は、カフェをオープンするまでは任意団体にすぎませんでした。代表の高山さんというシングルマザーが、高齢者施設に勤めながら「福祉制度の枠を取り払って、みんなが支え合う地域を創ろう」という考え方で「ハピスポひろば」というイベントを開催していたのです。しかも、その規模がすさまじい。当初こそ参加者もわずか40名ほどの集まりだったのに、次第に口コミで仲間が増えていて3回目には1500人を超え、4回目からは、なんとビッグハット(長野市スポーツアリーナ:収容人数8,000名)で開催するようになったのです。
イベントには、障害者による音楽演奏や生き方の発表、子どもたちへの絵本の読み聞かせ、高齢者によるファッションショーなどの他、障害者プロレス(ある脳性麻痺の男の子の夢を叶えた)、「耳の聞こえない人の町、しゅわしゅわ(手話)タウン」、「生きづらさ♫替え歌自慢」、「クラウン(ピエロ)増殖計画」など、たくさんのユニークな企画が盛りだくさん。必要経費はすべてクラウドファンディングで集め、全国からもたくさんの参加者があるといいます。
「ごちゃまぜカフェ」は、そんな活動を7年間続けてきた高山さんたちが、いつでも仲間たちが集える場所を作るために昨年4月にオープンしたばかりの店なのでした。集まって来るのは、関係者だけではありません。Facebookを通じて高山さんの活動に興味をもっていたファンも続々やって来ますし、イベントの企画を相談するために人づてで紹介されてくる学校関係者などもたくさん来ます。「みんなの協力でなんとかなっている」と謙遜するものの、カフェの運営だけで自立運営できているところは素晴らしいと思いました。いわゆる助成金頼みの活動とは、まるでやる気が違うのです。
そして何よりも、代表者個人の人間的魅力です。なないろサーカス団(奈良県)や四つ葉のクローバー(滋賀県)に伺ったとき感じたものを、「ごちゃまぜカフェ」の高山さんにも感じました。その笑顔に会いたくて、さまざまな人たちが集まってくるのです。「ごちゃまぜカフェ」の次の夢であるという「ごちゃまぜハウス=ごちゃまぜタウン」も、彼女ならきっといつか実現してしまうことでしょう。
ごちゃまぜカフェに集う人々。2列目右から2番目(赤いシャツ)が代表の高山さん