複数の障がい者施設が集まって共同で製品の開発に取り組むという活動は、全国で積極的に展開されています。今回ご紹介する静岡県浜松市の「ストレートタイガープロジェクト」も、そんな動きの中の一つ。「ストレートタイガー」とは、「直虎」の直訳ですね。ホラ、現在、NHKの大河ドラマで話題となっている「女城主直虎」のことですよ。大河ドラマの制作が発表されるとすぐに、三ケ日たちばな授産所の平澤文彦さんが、「まさに千載一遇のチャンス。これを活かして、地元の障害者施設が一緒になったプロジェクトを立ち上げよう」と、市内の複数施設に声をかけたというのです。
「障害者施設というのは、今まで行政や企業からのお誘いを待ってイベントなどに出展することがほとんどでした。でもこれからの時代は、自分たちが主体性をもって動くべきだと思うのです。浜松が大河ドラマの舞台として注目を集めている間に、ぜひ私たちが地元の魅力を全国に発信する動きを担ってみたいと考えました」と、平澤さんはその思いを語っています。とはいっても、この企画は平澤さんをリーダーとするあくまで個人的なもの。そのため、組織のトップの集まりではなく、趣旨に賛同する現場の若手職員だけを集め、実践的かつスピーディーな動きをめざしました。
ドラマが放映されれば、直虎ゆかりの寺である龍潭寺には、相当数の観光客が全国から集まることが想定されます。そこで平澤さんたちは、それぞれが独自の「直虎グッズ」を制作。イメージの統一を図るため、パッケージデザインは平澤さんが行いました。「プロにデザインをお願いしなかったのは、もちろん懐事情もありますが、プロジェクトの意図を十分に反映させたかったからですね」
渋川産のお茶を練り込んで焼いた、ユニークなキューブ型の「タイガークッキー」。遠州綿紬が巻いてある丸缶に入った「渋川茶飴」。豆の形に成形された和紙箱に、渋川産のお茶でコーティングされた千葉県産のピーナッツが納められた「茶まめ」。真田紐と寛永通宝が留め具に使われている「道中財布」等々。若いメンバーが生み出したグッズは、どれも観光客の心をくすぐる製品ばかり。現在、龍潭寺の藤棚の下の特設スペースにて毎週土曜日に販売しており、非常に好評を博しているとのことです。
このプロジェクトがユニークなのは、現場の職員が自主的に集まって、一緒にモノづくりをする経験を行ったことでしょう。公的な集まりではないので、プロジェクトロゴをプリントしたTシャツをみんなで販売して、予算も自ら生み出しました。「売れる商品かそうでないかは、販売会での売上結果がすべて。売れ行きが伸びないと、すぐに商品の改良を検討します」など、本気度が施設の集まりのプロジェクトとは思えないほどなのです。7つの障害者事業所が協力して、地域活性化のために自主的に動き出したという今回のプロジェクト。施設の若手職員たちの力が結集した好事例として、もっと注目されていいでしょう。
(プロジェクトメンバーの若手福祉施設職員たちは、元気いっぱいだ)