沖縄県は2014年に国内で初めて「沖縄観光バリアフリー宣言」を行い、「誰もが安心して楽しめる観光地」をめざしてさまざまな活動が進められています。その活動の代表が、那覇空港に設置された「しょうがい者・こうれい者観光案所」。高齢者、障害者、外国人、子ども連れの家族など、旅行におけるさまざまな手助けが必要な人たちに向けたサポートセンターであり、NPO法人バリアフリーネットワーク会議が運営を委託されています。
ここでは「バリアフリー対応の観光地や宿泊施設を知りたい」といった問合せから、介護タクシー・福祉レンタカーの手配、透析を受けられる病院を手配するなどの医療サポート、車いすの方でも海水に浮かぶことができる水陸両用チェアボートや、車いす・ベビーカーの有料レンタルに至るまで、旅行者のあらゆる相談事に対応できる体制を整えています。
レジャーだけでなく、医療サポートも万全です。人工呼吸器の充電器を忘れてしまった方には代わりの充電器を提供することができるし、毎日服薬している薬を自宅に忘れてしまった精神障害の方がやって来ても、かかりつけの病院と連絡して服薬情報を提供してもらい、那覇市内の提携病院から処方箋を発行してもらう手続きを代行してくれます。ここまで親身になって相談してくれる窓口があるのは、本当に心強いことでしょう。
これだけの公的活動にもかかわらず、運営に関わる行政からの助成金は一切なし(空港内カウンタースペースは、行政からの提供)。あくまで民間の取り組みとして切り盛りしているというのですから、頭が下がります。
「補助金頼みの活動では、予算が削られたときに運営が成り立ちません。予算がなくなったから活動をやめるなんて、利用者に対して失礼な話じゃないですか。私たちがめざしているのは、バリアフリー対応が各事業者にとってビジネスとなることを証明すること。私たち自身が、それを実践するのは当然です」と、親川代表。
弱者にとって優しい社会とは、すべての人にとっても住みやすい社会であります。沖縄県の徹底したバリアフリー対応が素晴らしいのは、それが概念的なもので終わらずに、将来の市場を見越したビジネス論として展開されている点につきるでしょう。誰もが楽しめるやさしい観光地をめざすバリアフリーネットワーク会議の活動が、沖縄を拠点として日本全国へと波及していくことを期待したいものです。
(水陸両用チェアボートに乗れば、車いすの障がい者でも沖縄の海を楽しめる)