若い才能と言えば、昨年末に取材でお邪魔した奈良県の「なないろサーカス団」というB型事業所は、衝撃的なところでした。なにが衝撃的って、「利用者=障がい者」のことを「サーカス団員」と名付けるこのセンスですよ。私自身、障がい者のイメージアップという観点では若い頃からさまざまな意見を述べてきたのですが、さすがに「サーカス団員」とは思いつかなかったな。
代表の中川直美さんは、取材で次のように語ってくれました。「障がいのある人たちは、決して保護されるような社会的弱者ではありません。一人ひとりは本当にユニークな表現の方法をもっていて、とてもチャーミングな人たちなのです。その魅力をうまく伝えられれば、地域の人気者になるはずだと私は考えました」
私が27年前にまとめたインタビュー集『障害者の日常術』(晶文社)と、まったく同じ考え方で、しかもB型事業所を運営し始めた37際の女性がいる!! このことに、私は衝撃と感動と共感と…とにかく諸々の感情を抱きました。この団体については「月刊福祉2月号」の「人と人をつなげる実践」で詳しく書かせていただいています。
コーヒーマスターの中島さんや、「村人」と題する小さな粘土の人形(ウルトラマンに出てきて、怪獣に追いかけられる村人たちのことらしい)ばかり作り続ける田井さんや、天才的なポップアートを描く森下さん…等々。ここの利用者たちは、まさに七色の才能をもっていて、それぞれが好きなことを思い切りやらせてもらうことで仕事につなげていく。それをサポートするのが中川さんを中心とする若いスタッフなのです。
そうはいっても生活介護施設じゃないからね。あくまでB型事業所としての高い工賃をきっちり確保しているのがまた、彼らのすごいところ。地域と密着し、利用者の能力を活かした新しい事業を受託できているからこその実績。まだまだスタートして1年にも満たない組織ですが、これからますます全国から注目される存在になるでしょう。