クラウドファンディングがブームとなっています。クラウドファンディングとは、不特定多数の人がインターネット経由で他の人々や組織に財源の提供や協力などを行う新時代の資金調達法のこと。最近で言うと、アニメ映画「この世界の片隅に」が、全国の3,374人から3,900万円を集めたことでも話題になりましたね。
公的機関や団体からの助成金に頼ってばかりの社会福祉法人経営者にとっては、このような資金調達法などあまり興味はないのかもしれません。しかし歴史が浅く公的支援が行き届かないNPO法人や任意団体には、まさに最高のツール。自分たちのやりたいことや夢を正面から訴えて、共鳴する人たちから支援を受けることができるのです。たとえ一人ひとりの支援額は少額でも、共感者が集まれば膨大な額となります。
先日取材でお邪魔した、長野県のHappy Spot ClubというNPO法人が、今月末に開催する「ハピスポ広場」の資金をクラウドファンディングで集めていました。小さな組織が主催するイベントですが、数年前からはなんとビッグハット(長野市スポーツアリーナ:参加者数2,000名)で開催しています。会場費等を捻出するためにも、最低120万円もの資金が必要なのです。
ちょうど取材した後で資金調達が始まったこともあり、私も少額ながら支援活動に協力し、その行方を見守っていました。しかしなかなか動きは鈍く、締め切り1週間前になっても目標額の半分にも届きません。「このままでは今年の開催はどうなってしまうのだろう?」と心配しました。最後の数日間は、何度も資金募集サイトの達成率を確認したくらいです。(少しずつ上がっていく様子が、なんだか台風時における川の堤防水位を見るみたいでスリリングでした。比較するのは失礼だけど…)
私でさえそうなのですから、代表の高山さんなどは本当に不安な日々を過ごされたことでしょう。「あと、残り●日。死ぬ思いで、みなさんに協力を訴えていきます」とネット上で語っていた姿が、とても印象的でした。クラウドファンディングのルールは、オール・オア・ナッシング。もし集めたお金が設定額から1円でもたりなければ、その時点ですべて無に帰してしまうのです。
しかし締め切り前日、あと14時間に迫ったギリギリのところ。ついに、支援金が120万円に達したのです!! おめでとうございます。最後の追い込みは本当にすごかった。きっと私の知らないところで、関係者が一丸となってイベント開催の意義を訴え続けていたに違いありません。私も支援者の一人として、感動してしまいました。助成金をもらうのに慣れきった人たちに、彼女たちの必死の努力を見せてあげたかったよ。
きっとこれからは、福祉の世界でもクラウドファンディングによる資金調達を基本とするような時代がやって来るはずです。その時もっとも重要なのは、実際にお金を出してくれる市民へのプレゼンテーションになるでしょう。「自分たちの活動をきちんとPRできないような団体には、一銭もお金はやらないからね」──そんな厳しい選考会になったとしたら、一体どれくらいの福祉関係者が生き残れるのでしょうか?