児童養護施設退所者のための自立支援ホームを運営するNPO法人四つ葉のクローバー(滋賀県)が発行する小冊子「四つ葉通信」の制作をボランティアで引き受けています。以前取材で伺った後、杉山理事長から広報宣伝の相談を受け、「ぜひ私にやらせてほしい」とお願いして、この冊子が誕生しました。早いもので、これまですでに6回も発行しています。
この法人の特色は、児童養護施設関係者には珍しく、当事者たちの声を世間に直接届けたいと模索していた点にあります。1年に1度開かれるライブイベントでは、ホームで暮らす若者たちが自分の過去を大勢の前で語ります。また理事長が福祉関係者から招かれる講演会でも、適切な当事者たちにも語ってもらう機会を作っていました。
「当事者たちのナマの声こそが、人々の心を動かすことができる」。私がつねに主張してきた福祉広報の基本を理解している数少ない関係者です。ここでなら、理想的な広報ツールが作れるのでは?と考え、「四つ葉通信」の発行をお手伝いすることにしたのです。
障がい者の就労支援施設の取材を専門とする私にとって、児童養護の分野はまったくの門外漢。けれども「普通の人たちの話に耳を傾け、文字化していく」作業は、私がもっとも得意とする作業。これまで培ってきたライターとしての能力が少しでもお役に立つのなら、こんなにうれしいことはありません。
これまで6人の若者たちの話を聞いてきました。『障害者の日常術』『ブレイブワーカーズ』といった障がい者のインタビュー集と同じくらい、充実した取材ができたと満足しています。とくに最新号で文字化したMISAKIさんの話は、スゴかった。開業医の長女として生まれ、県内でもトップクラスの成績を誇った女の子が、それでは満足しない父親からずっと虐待を受けてきたというのです。そんな悲惨な話を、あっけらかんと話してくれる彼女。そのギャップに驚かずにはいられません。
最近、メディアではこうした児童虐待のニュースがひんぱんに取り上げられます。しかし、なかなか自分のこととして捉えられないのが現実でしょう。人々の意識を変えるためには、当事者たちに自分の体験を話してもらうのが一番の近道なのです。MISAKIさんのような普通の女の子が壮絶な過去を語ってくれるからこそ、共感者を増やすことができるはず。そう私は確信しています。これからも「四つ葉通信」の制作に関わり続け、たくさんの若者たちの声を伝えていきたいと思っています。