「鷹見泉石の来翰を読む(政治篇)」が完成

Kプランニング

鷹見泉石というと蘭学者というイメージをお持ちの方も多いかもしれません。しかし本来の姿は、江戸幕府の老中を務め、江戸末期の対外国交渉役も担った藩主・土井利位の参謀役として、国政にも深く携わった政治家だったのです。古河歴史博物館に所蔵されている膨大な数の「鷹見泉石宛ての来翰」は、鷹見泉石がどんな人たちとやりとりをしていたのかを具体的に示す貴重な資料です。四年前に刊行された『蘭学篇』に続き、今回は古河在住の研究者の手によって三年がかりで政治関係の書簡を中心にセレクトして読み解きました。それがこのたび完成した『鷹見泉石の来翰を読む─政治篇─』なのです。

著者チーム(鷹見家文書研究会)の一人で、『古河藩』(現代書館)の著書もある早川和見さんは、本書の意義を次のように語ります。「鷹見泉石が藩主・土井利位のサポート役として活躍していたことが、手紙の解読によって改めて証明されました。個人的に面白かったのは、土井利位の後を継いだはずの利順が病弱を理由に廃嫡された本当の理由が書簡に記されていたこと。このようなトップシークレットの手紙を解読でき、目からウロコが落ちました」

同じく研究会の一員である鷲尾政市さん(元古河歴史博物館長)も、藩主・土井利位と泉石との関係が生き生きと見えてきたと語っています。「殿様というのは細かい仕事を家老に任せるタイプも多い中、利位は非常に細かい指示を部下である泉石に出しています。こうしたやりとりから、当時の幕府の人事問題、藩主同士の人間関係、対外秘の秘密事項なども読み取れて興味深かったですね。読んだらこれは焼き捨てろ、という指示の手紙もありました。なぜかそれが現在まで残されているわけですけど(笑)」

国の重要文化財にも指定されている約1,954通の来翰は、『蘭学家老・鷹見泉石の来翰を読む』(蘭学篇・政治篇)の刊行によって、約220通が解読されました。しかし全体から見ると、まだ1割程度にすぎません。残された来翰をどのように解読していくのかが、これからの課題として残されています。代々継承してきた貴重な資料を古河歴史博物館に寄贈した鷹見家第十一代当主・鷹見本雄さんは、自費を投じてこれまでに4冊の鷹見泉石資料を書籍として発行してきました。今回の来翰集は、その総決算ともいえるもの。「本書の出版をきっかけにして、古河市民全体が町の歴史に興味をもつようになってほしい」と鷹見当主は語っていました。