「工賃向上セミナー」「工賃向上研修会」というキーワードで検索すると、全国各自治体でさまざまな研修会が何度も開催されていることに驚かされます。それほど障がい者就労支援施設(とくに就労継続支援B型事業)において「工賃向上」を実現することは大きな課題とされているわけでしょう。
その一方、最近は障がい者アートを「アール・ブリュット」という呼び名で普及しようとするプロジェクトも盛んに行われています(正確には障がい者アート=アール・ブリュットと呼ぶのは間違いなのですが、ここではその解説は省きます)。工賃向上と障がい者アート。言ってみればこの2つは、障がい者福祉における2大キーワードと呼べるかもしれません。
しかし「障がい者アートを工賃向上の切り札として使おう」という発想は、私の知る限り皆無であるように感じます。それはなぜでしょうか? 1つには、就労支援事業を担う人たちの、アート活動への無理解と知識不足です。素晴らしい先進的な活動を行っている施設でも、「アートのことはよく分からない」と苦手意識を持っているようです。
またアート活動を積極的に展開している施設では、逆に「少しでもアートで利用者工賃をアップしよう」という発想が貧弱なのも事実。もともと最重度の障がい者たちによる日中支援、生活介護事業としての意味合いが強い作業としてアート活動を選択しているので、それを「どうやってお金に換えようか」という発想を抱けないのです。
しかし、これだけ全国でさまざまな「工賃向上セミナー」「工賃向上研修会」が開催されているわけですから、もう少し違った切り口の研修会があってもいいのではないでしょうか? 東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けて、これまで以上に障がい者アートの普及活動は盛んになっていくはずです。この好機を活かさない手はありません。
障がい者就労支援活動を担っている人たちも、今こそ障がい者アートに注目するべきです。素晴らしい作品を描くアーチストは、自分たちの施設にもじつはたくさん隠れているのです。彼らの眠れる才能を見いだし、その価値を周りにアピールする。施設や製品の販売活動を行う際に、利用者たちが描く障がい者アートがどれだけ役に立つかをもっと多くの関係者に認識してほしいと思います。
「障がい者アートを、工賃向上にどう活かすか?」Kプランニングでは、このようなテーマも盛り込んだ実践的な工賃向上研修会を、今後も行っていきたいと考えています。